ゲラの合間にちょっとだけ…のつもりが、一気に読み切ってしまった。
17歳の時に見知らぬ女性を強姦した男のモノローグ。成人し、普通に就職し、職場恋愛を経て、婚約、というタイミングで、急に罪の呵責に苛まれる。自分の罪を告白するブログを公開することによって、被害者女性を探し出し、謝罪したい。そしてこの謝罪したいというひたむきな情動が、彼の周りの人間関係を壊していく。
といえば、よくある誠実な贖罪の話なのかと思うわけだけど、そうではない。なーんか最後までこの男はどこかズレていて、めっちゃモヤモヤする。それがすごいところ。
象徴的なのは、彼の書き上げた謝罪文を元同僚女性がクソミソに貶す場面。彼は彼女に感想を問う。
「それで? 感想は?」 ここ数か月、自分なりに練りに練った文章だった。 「何を期待してんの?」
こう始まり、誠実さのアピールが透けて見えることの嫌らしさ、「被害者に死ねと命じられたら喜んでそれに従う」などと言う、謝罪の形をした脅し、繰り返される謝罪の言葉の薄っぺらさ、そんなようなものを元同僚はすべて斬り捨てていく。
これには、炎上→謝罪→さらに炎上という、最近よくあるエモ謝罪文を思い出してしまう。ああいうエモ謝罪文は、「こう言っとけば読む側は納得するだろう」と、書き手が読む側を安く見積もってる感じが鼻につくわけだけど、あの、独りよがりなやらしさが本書の主人公にもあるんだなと。
過去の己の罪への義憤が、彼をブログでの告白に駆り立てた。でも、その告白って結局誰のためなんだろう? 被害者よりも自分が救われたいんじゃないのか、この人は? そう思わせる仕掛けが随所にあって、そこが読みどころだし、答えは出ない。
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