三砂慶明さんの『千年の読書』で紹介されていて手に取った本。胸を打つ詩が多数出てくるので、ずっと泣きながら読んだ。
最初のページにこうある。受刑者の子たちのこと。
それぞれが、自分を守ろうとして、自分なりの鎧を身につけている。 (略) 千差万別のその鎧は、たいがい出来がよくなくて、自分を守るよりも、自分をさらなる窮地に追い込んでしまう悲しい代物だった。
あんまり切ない。人に考えや思いを伝える、言葉を発する、心を開くという行為は、たしかに安全な処でないとできない。殴られたり、馬鹿にされたり、いじめられたりするような場所では自分を隠してサバイブしなくてはならないだろうから。
本書は「詩を書く授業」を通じて、感情を武装していた子たちが鎧を脱いでいく様子を綴るドキュメンタリーだ。著者の寮美千子さんと少年刑務所の先生たちは、「詩の教室」を安心できる安全な場として提供するために心を砕く。その様子はまるで「救い」だ。絶対に急かさずに言葉を待つ。ようやく出た言葉を心から受けとめる。重い鎧を外した瞬間の安心した深い呼吸が聞こえてくるようで、なぜこんなにやさしい子たちが犯罪者になったのかと、読後も深く考えさせられている。
空が青いから白をえらんだのです
『くも』というタイトルの、このたった一行の詩は、父親に金属バットで殴られた傷痕を持つ受刑者のものだという。薬物中毒の後遺症でろれつが回らない。母を7年前に亡くしている。父のDVから守ってあげることができなかった母を思って書いたという彼の詩を私はずっと忘れないだろうな。
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