コロナ禍の「ブックカバーチャレンジ」5日目。次には回さず自己完結で。
コロナ自粛を活用して五大長編を読み直している。ドストエフスキーをもういちどまとめて読むなんて、おばあちゃんになってからしかできないことだと思っていたから、コロナで珍しく良かったこと。五大長編では『悪霊』が最高傑作だと個人的には思っている。特に「スタヴローギンの告白」。少女を凌辱し自死に至らしめた超絶美男子の告白は当初、道徳的理由でカットされていたと聞く。でも、この章こそ山場。米川訳は笑えるから好きなんだけど、告白の章ではごってりとした文語体が物々しさを盛り上げている。
結局わが身ひとりを責めた、理性の固まっていない、頼りない少女のみじめな絶望! こういうものはあとにもさきにも覚えてがない。余は夜になるまで、じっと身動きもせずにすわったまま、時の移るのも忘れていた。
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ドストエフスキー 著/米川正夫 訳『悪霊』
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