コロナ禍の「ブックカバーチャレンジ」6日目。次には回さず自己完結で。
『悪童日記』が日本で刊行されて以来、新刊が出るのをいつも楽しみに待っていた。『文盲』はハンガリー動乱で亡命したアゴタが、やがて本人が言うところの「敵語」であるフランス語で書く作家になっていく経緯が綴られる。
『悪童日記』はガリマールにもグラッセにも断られ、スイユで出版が決まり世界的ベストセラーになった。つまり、編集者の判断力なんてのはその程度のものだと私は思っている。
さて、人はどのようにして作家になるかという問いに、わたしはこう答える。自分の書いているものへの信念をけっして失うことなく、辛抱強く、執拗に書き続けることによってである、と。
辛抱強く執拗だったおかげで、アゴタはちゃんと発見された。私は「編集者はその程度」を忘れたくないし、いつも自分に言い聞かせていることがある。周囲の評価はどうあれ、自分が面白いと思うならその信念を曲げない。書き手に「あなたは最高の書き手だと『私は』思う」と伝え続けること。
そのことを教えてくれた一冊が『文盲』だと思っている。
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